人生最大のイベント「結婚」その約束の儀にはどのようなしきたりがあるのでしょう?
結納の品々は、地方によってさまざまですが、原点は、婚約が整ったことを酒を酌み交わして喜び合うことにあり、酒と肴が中心でした。
角樽(つのだる)の酒と二尾の鯛を腹合わせに結んだ懸鯛(かけだい)だけという地方もあります。古くは、三種一荷、五種一荷などといわれましたが、「荷」とは酒のことで、「種」のほうは肴の種類を表しています。
肴もだんだん生魚や生ものは少なくなり、一般的には、あわび、昆布、するめ、かつお節などの干物が用いられようになりました。この酒と肴に、女性のための小袖や帯が加えられるようになり、最近では、酒は樽料として、小袖や小袖料、帯料、そして女性側からは袴料として、結納金(金包)という形で、金に替えて贈るのが普通になりました。
結納の品々もすっかり様式化して、デパートなどで結納品一式がセットとなって売られています。
種類も、五品目、七品目、九品目などがあり、目録も受け書(結納を確かに受け取ったという領収書)も印刷されており、本人が名前を書き込むだけになっています。
もちろん、両家とも同じ品目にしますが、仲人に相談して決めればいいでしょう。
※五品目の場合は(1)から(5)まで、七品目の場合は(1)から(7)までです。
これらの九品目(または五品目、七品目)が白木台に載せられるのが関東風ですが、今では全国的に普及しています。派手に二、三台の白木台に載せることもあります。また、指輪を金包の台に添えることもあります。
関西では、小袖料としての金包、酒料としての柳樽料、肴料としての松魚料の三品がそれぞれ松竹梅の水引をかけられて三台に載せられ、これに熨斗と末広がついて五台に飾られます。派手になると、さらに寿留女と子生婦の現物を白木台に、高砂人形、そして指輪台がつきます。目録は別に片木盆に載せられます。
いずれにせよ、結納品はほんの形式にすぎず、実質的には結納金中心に考える人が増えている一方、形式的な結納は一切やめて、結納金も不用として、指輪だけを贈ったり、記念品を交換する人たちも増えています。
結納をするもしないも、あくまでも結婚当事者の考え方次第です。
本人同士がよく話し合い、それぞれの両親に相談して決めるのが、常識的な対応でしょう。
これらの結納品とともに、家族書、親族書、健康診断書を添えて出すのが慣例です。奉書紙に墨で書くのが正式ですが、白い便箋にペン書きでもいいです。
家族書は、父母、兄弟、姉妹の順に記し、親族書には、祖父母、伯父伯母、叔父叔母を父方母方に分けて住所氏名を記します。
奉書紙の場合は、横長に二つ折りにして、折り目を下にして墨書きし、左から先に三つ折りにしたら、上包みをかけ、「家族書」「親族書」と表書きします。ペン書きの場合も、下から三つ折りにして白い長封筒にいれます。
県東部の結納品は七品目で5万円前後。県西部では九品目で7万〜8万円前後。
目録の署名は本人名が多く、宝金は50万〜100万円が目安です。
このほかに、鳥取県では「迎え傘と迎えぞうり」といって、傘と履きものをつけることがあります。女性側は、記念品などを用意します。
鳥取県西部では、結納が行われることを「樽が入る」などといいます。
鳥取全体では、女性宅で行うことが多く、双方の両親と本人、仲人夫婦が出席するのが一般的ですが、鳥取県東部では本人たちが出席しない場合もあります。
当日は男性側が納めるだけで、結納返しは荷物送りのときなどに行います。ただし、鳥取県東部では結納返しを行わず、結納当日に記念品を用意します。男性側は結納品のほかに、「迎え傘と迎えげた」といって、傘と履き物を贈ることもあります。また、鳥取県中部では、角樽と「やそはち(八十八)といって、布袋に入れたお米をつける場合があります。
米子周辺では、結納のさいに朱塗りの杯を用いて、固めの杯をくみかわすことがあります。
結納品は九品目で5万〜7万円程度。品目は目録・慰斗・末広・御帯料・寿留女料・友白髪・子生婦・家内喜多留・栄名料(さかなりょう)・八木料(はちもくりょう)・結美和・高砂などから、組み合わせます。
目録の署名は松江市では本人名、浜田市では家名が多く、御帯料は70万〜100万円程度が目安です。品目の家内喜多留料は2万〜3万円程度。栄名料は1万〜2万円程度を包みます。寿留女料、八木料も1000〜2000円程度。
女性側は男性よりもやや控えめな品物を用意し、袴料として御帯料の約1割を包みます。
一般に、結納は女性宅か、もしくはホテルや料亭などで行われます。
出雲地方では、当日は男性側が納めるだけで、女性側からのお返しは荷物送りの時や挙式当日などに行います。一方、石見地方では、女性側は男性側よりも控えめな品を用意して、双方でとりかわす形式もみられます。
松江市周辺では、品目のなかに「八木(はちもく)」を加えることがあります。八木とはお米のことで、かつては布袋に入れた米を用意していましたが、最近は八木料として金包みにするようです。また、かつては、そのほかに「待子(まちご)」といって、女性本人に着物または洋服などを贈る習慣もみられました。